デンマーク人気屋台ランキングNo.1。店長はホットドック界の革命児だった!

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デンマークといえば、ホットドック。この国で誰もが知るのが「John’s Hotdog Deli」だ。白く長い髭をしたオーナーは、こだわりの自家製トッピングと斬新なメニューで下火にあった屋台業界を復活させた。彼は何を考え、その野心はどこから湧いてくるのか? その答えはとてもシンプルだった。

 

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John Jensen|ジョン・イェンセン

John’s Hotdog Deli 屋台オーナー、ホットドックスタンド保全協会会長

9年前に開業し、コペンハーゲン中央駅前、チボリ公園の向かい側に店を構える。今年最も人気のある屋台として1位に輝き、観光スポットとしても有名。ホットドックスタンド保全協会(Foreningen for pølsevognens bevarelse)を設立し、屋台の普及にも努める。

2011年には、コペンハーゲンで東日本復興のチャリティーイベントを開催。海外出張も多く、近々日本にホットドックを作りに来るという。

屋台のFacebookページはこちら

▶︎ インタビュー&文&現場写真:別府大河
▶︎ 写真提供:John’s Hotdog Deli

―01―
事故に遭って、屋台を開業。
味も見た目も違うホットドックを

――コペンハーゲンに着いてまず目に飛び込んでくるのが、ジョンさんの屋台。いつ通ってもお客さんがいますよね。どんな経緯でこの屋台を始めたんですか?

もともとはレストランのシェフだったんですよ。でも事故で背中を大怪我して、もう仕事を続けられなくなっちゃって。で、9年前にこの店を始めたんです。コペンハーゲンでは、事故などでシェフとして働けなくなったら、ホットドックの屋台を開く権利がもらえますからね。

――それで屋台を。ジョンさんのホットドック屋は旅行のガイドブックに載るほど有名ですが、他のお店とは何がどう違うんですか?

まず味がまったく違う。だって、僕の作るホットドックのトッピングは全部手作りですから。いちいち書いてないけど、ソーセージもすべてオーガニックですしね。

デンマークの伝統的なホットドックには、カリカリのオニオンをトッピングするんだけど、うちの場合は揚げる代わりに酢漬けにしていて。そうやっていろいろアレンジしているんですよ。ちょうど今、マスタードにビールを混ぜたトッピングを試作中で。けっこう斬新でしょう?(笑)

メニューも15種類くらいある。コペンハーゲン中央駅の目の前は、国内で最も人通りの多い場所。だから観光客が楽しめるようなスタンダードなものから、常連さん向けの週代わりのメニューまで、幅広く用意しているんです。

でも振り返ってみると、「自己流でやる!」と宣言して店を開いた時は、「屋台でホームメイドなんて潰れるに決まっている」っていろいろ批判されましたね。今となっては、あの時散々馬鹿にした人たちが、「うちでホットドックを作ってくれないか?」って。世間ってくだらなくて本当にいい加減ですよね(笑)。

―02―
「屋台はマズい」という古い常識
それをぶっ壊したかった

――なぜそんな屋台を作ろうと思ったんですか?

デンマークのホットドック屋台の歴史が始まったのは、さかのぼること1926年。それからどんどん普及して、1970年代にはコペンハーゲンだけで250店もあったんですよ。でもそれからは右肩下がりで、今はたった55店。本当はみんなわかってたんですよ、誰かが変えなきゃいけないって。

そうは言っても、他の店みたいに、あんなにマズくて、体に悪そうなホットドックを作るなんてごめんですよ! みんなお金儲けしたいだけのつまらない連中。僕はそんな屋台にまた行きたいと思ったことはありませんからね。本当においしいものだけを作って、「屋台はマズい」「どこのホットドックも同じ」っていう固定観念をぶっ壊したかった。

――たしかにデンマークでホットドックはよく食べますが、わざわざまた食べに来ようと思ったことはないですね…。

でも簡単じゃありませんでした。特に最初の5年間は。僕が他の屋台とは違って本当においしいものを作っていること、新しいことに挑戦していることを、まずは知ってもらわなきゃいけませんでしたからね。スタンダードなトッピングとオリジナルなものを半々にして売ったり、屋台の場所を移動させてみたり、とにかくやれることをやりました。

――ホットドックスタンド保全協会会長という別の顔を持っているんですよね?

はい。ホットドック屋台の文化の守りつつ、もっと広めるために「ホットドックスタンド保全協会」(Foreningen for pølsevognens bevarelse)を設立しました。年に一度、ホットドックフェスティバルを開いて、その収益を寄付して、屋台の普及のための資金に回しているんですよ。

―03―
古い人は放っておけ!
新しくなければ、人生じゃない

ーー自分のホットドック屋を経営しつつ、ホットドック業界全体も盛り上げる。そうすれば、巡り巡って自分のホットドック屋の売上も増えて、みんなハッピーということですね。でも、そんなエネルギッシュで、強い動機はどこから湧いてくるんでしょうか?

理由なんてありませんよ。僕は新しいこと、誰もやっていないことをやりたいだけ。もちろんデンマークにだって古い価値観の人はたくさんいます。でも、そんな人のことはどうだっていいじゃないですか。

今、僕に感化された若者がたくさん集まってきているんです。廃れつつあったこの世界に新しい風が吹き、業界全体が活気を取り戻しつつある。僕はそれがうれしくてうれしくてたまらなくって!

みんなと同じような家に暮らして、同じような服を着て、同じようなご飯を食べる。次の朝起きたらまた同じことに繰り返し。そんな人生は楽しいですか? 昨日と同じことをしていて、飽きませんか?

僕はその人たちのことを否定はしません。ただ、僕は他人と同じなんて嫌だし、過去の成功体験にしがみつきたくもない。だから今日も僕は新しいメニューを開発しています。

同じ場所に留まっていたくないからできるだけ旅に出るし、旅先でおいしい食材を見つけたらすぐに取り寄せて、自分のホットドックに使えないか模索してみる。僕はいつだって学びたいし、そのために新しいことをどんどんしていきたい。そうじゃなきゃ人生、面白くないでしょう?

デンマークに来たら中央駅前のホットドック屋台に来て、「今一番イケてるホットドックをください」って言ってくださいね。今までどこでも食べたことのない、デニッシュ・ホットドックを用意して待ってます!

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