【第4回】「作物と共にエネルギーを収穫する」ロラン島の実態とは?


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デンマークの先進的なエネルギー政策の最前線を走っているのが、自然エネルギー100%のロラン島である。

沖縄本島と同じ面積の島に、約6万3千人の島民。
この小さな島が、10年以上の暗黒時代から自然エネルギー100%を達成した道のりは困難の連続だった。

前回までの連載ではデンマークについて取り上げたが、ここからはロラン島に焦点を当てていく。
第4回の今回は、現地15年在住のニールセン北村朋子さんにお話を伺い、そのリアルなロラン島の実態に迫る。

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ニールセン北村さんに初めてお会いした駅周辺のマリボ市の街並み

「昔は「腐ったバナナ」と言われていたんだけど、今では「グリーンバナナ」って呼ばれているんです」

ジャーナリスト、コーディネーター、アドバイザーとして、ロラン島の歩みを共にしたニールセン北村朋子さん(著書『ロラン島のエコチャレンジ デンマーク発、100%自然エネルギーの島』(野草社))は快調に話しはじめた。

かつて造船業を基幹産業として繁栄したロラン島は、1980年代後半に造船所が閉鎖。
名実共に産業が衰退し、島の経済全体が低迷すると、12年間の暗黒時代に突入した。
市は財政難に陥り、若者や知識人が都心に流出して、代わりに社会的に問題を抱えた人々が流入。
失業率は一時、20%まで上昇したという。

そこで彗星の如く現れたのが、公共事業部長のレオ・クリステンセンさん(連載第5回で取材)だった。

市長をはじめ、レオさんが中心となって自治体改革に乗り出し、自治体の各独立事業への株式会社制度の導入や公共事業への積極的な投資、風力発電メーカー大手企業の誘致などのテコ入れが功を奏し、見事にロラン島は完全復活を果たした。

「当時はITバブル真っ只中。
でももし弾けたら同じことの繰り返し。

そこで目をつけたのが、ITの次に注目されていた、再生可能エネルギーだったんです。

どこよりも迅速に開発を進められる場を提供する自治体になれば、関連企業を誘致することもできるし、実証実験を行ってもらうことで島全体としても知見を積み重ねることもできる。そういう戦略でした」

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オイルショック以降、ロラン島の各地で風車協同組合ができて個人や複数人共同での風車の購入に拍車がかかり、今ではロラン島と隣のファルスタ島にあわせて、およそ500基の風車が立っている。

「この2つの島では農業が盛んで、農産物の年間売上は約500億円。
エネルギーの売上は300億円くらい。

そこには国営である洋上風力の売上も含まれているけど、いまや売電は農家の副収入として必要不可欠なものになっています。
「作物と一緒にエネルギーも収穫する」のがロランでは当たり前なんですよ」

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農家になるためには3年半の教育が必要かつ、農業経営者になるためにはさらに大学院の卒業までが必須のデンマーク(義務ではないが、大学院を出ていないと難しい)。
国内外での法規制や最先端のテクノロジー、気候変動、世界情勢の把握、さらにエネルギーまで幅広い見識が必要だと認識されている。
ニールセン北村さんは農業教育の重要性を指摘する。

「たとえば、麦をつくったら、藁が出る。
その藁を売り、電気や地域暖房にして、副収入にする。
そして、その灰は肥料として返ってくる。
ならば、灰にどれくらいの養分が残っているか、農家さんたちはわかっていないといけないですよね。

風力発電も、取引市場での売買価格の変動や効率を最大化させるグリッドのつなぎ方とか、いつ建て替えが必要なのか、風車自体を売った方がいいのかなど、本当にたくさんのことを知らないといけない。

でも、だからこそやりがいもあって、一部の若者の間では農業はすごくカッコいい職業だと思われているんですよね」

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市民の多くが自治体や農業に従事するロラン島では、「エネルギーはエネルギー」「農業は農業」「自治体は自治体」と個別に取り組むことは不可能、ないしは圧倒的に非効率的だということを示唆している。

むしろ、このようにすべてを有機的につなげあわせて、包括的にアプローチした方が、全体として持続可能なエコシステムを構築できるのだとも言える。

本連載は、ニールセン北村さんのご協力がなければ成り立たなかった。
コペンハーゲンからロラン島に電車で着くと、初対面なのに駅まで迎えに来てくれたのがニールセン北村さんだった。

車でロラン島を案内してもらい、気さくにロラン島のことやデンマークのこと、最新のエネルギー事情など、たくさんのことを学ばせてもらった。
本連載の取材のために数日間ステイしたのだが、宮城県東松島市からの小学生の引率に同行させていただいた際には、ご自宅に数日間泊めていただいたことも。

そんなニールセン北村朋子さんの著書『ロラン島のエコチャレンジ デンマーク発、100%自然エネルギーの島』は、未来のヒントで溢れている。
本連載に興味を持っていただき、さらに詳しく知りたい方は、ぜひ本書を参考にしていただきたい。

日本にとって、ロラン島の最前線に立って数々のプロジェクトを行う日本人がいることは財産であり、希望だと思うんだ。

(本メディアのニールセン北村朋子さん単独インタビューはこちらから)