【第3回】節電すればするほど儲かる!デンマークの電力システムが資本主義の常識を覆す


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「21世紀的な資本主義のあり方はこれなのかもしれない。」

この記事を読み終えた時、そう思う人が多いはずだ。

エネルギー自給率100%を達成し、化石燃料からの完全脱却を掲げるデンマーク。

エネルギー需給の動向がリアルタイムで可視化され、発電した電力は政府が全量買い取ることを約束する。
しかも、なんと「節電すればするほど儲かる」システムさえある。

デンマークが国をあげて構築した、驚くべき電力システムとは一体何なのだろうか?
第3回の今回は、その裏側に迫る。

▶︎ 取材&文&一部写真:別府大河

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※ オレンジがGDP、青がエネルギー消費量、緑がエネルギー/GDP

「経済の右肩上がりの成長には、それに平行したエネルギー消費量が必要だ」という一般常識を、完膚なきまでに打ち破ったのがデンマークだ。

上の表を見てもらいたい。

エネルギーの大転換を開始して以降、GDPは順調に増加傾向にあるものの、エネルギー消費量はほぼ横ばいを維持していることが読み取れる。
それにとどまらず、その裏では再生可能エネルギーの導入を進めているのだ。

このようなことがどうして可能なのか?

日本では2016年4月まで、東京電力、東北電力をはじめとする10の電力会社が電力市場を独占していた。
しかも、東日本では50Hz、西日本では60Hzと交流電源の周波数が異なるため、東西に渡って電力を送電することができない。

それに対して、デンマークではヘルツ数の地域間格差などのインフラの問題はまったくない。

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また、送電だけは政府管理下で行われているものの、それ以外の発電、売電、配電部門はすべて自由に解放されている。
さらに、市場の独占や寡占を防ぐため、一つの企業がその3部門すべてを独占することが法律で禁止されている。
つまり、発電、売電、配電のうち2つまでしか取り扱えない仕組みなのだ。

デンマークの送電管理を執り行っているのが、国営会社のエナギーネットである。
以前は日本と同じく2つの電力会社が市場を独占したが、1998〜2000年にかけて政府が電力会社を買い取って同社を設立し、配送電分離を決行した。

さらに自由化は国内に留まらず、国際電力取引市場ノードポールに加入。
ノルウェー、スウェーデン、フィンランドから消費者と生産者は自由に売買先を選択できる仕組みなのだ。
同時に、発電した再生可能エネルギーについては、国が固定価格での買い取りを行っているため、売電の自由度がとても高い。

同社のホームページにいくと、どんな電力が、どこで、どうやって、どれくらい発電され、国内外から輸出入され、消費され、二酸化炭素を排出しているかなどがリアルタイムで視覚化されている。

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今現在の電力動向も一目瞭然。ホームページはこちらから。

デンマークの配電会社は「節電すればするほど儲かる」と聞いて耳を疑わない者が少なくないだろう。
温室効果ガス排出量を抑制する数値目標を毎年設定する政府は、各配電会社に節電目標を与えて毎年報告する義務を負わせている。
達成できなかった場合は企業に罰金だ。

もちろん政府は罰金制度を設けるだけでなく、配電会社が節電に取り組んだ方が、企業として利益が出るような電気料金を設定している。
そのため、電力会社は顧客にコンサルタントを送って省エネを指導するなど、積極的に節電を促している。

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日本では、2015年に発送電分離が行われる予定だったが、2020年に先延ばしされた。
デンマークを参考に、日本はどのようにエネルギーと向き合えばいいのだろうか。

デンマークの節電の取り組みには、資本主義の新たな形が垣間見える。
消費を抑えることが節約になるだけでなく、経済性も保てる仕組みは、他の様々な分野でも適用できる大きな可能性がある。

既存の資本主義を肯定するわけでも、完全に否定するわけでもなく、循環のルールを少しだけ変える。
これが21世紀の資本主義の、一つの未来なのかもしれない。