【第2回】2050年、脱化石燃料!?デンマークのエネルギーの歴史と未来


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ロラン島の成功の背景には、デンマークのエネルギーの歴史が密接に関わっている。

連載「希望の息吹は、ちいさな北欧の島から」の第2回では、オイルショックから立ち直り、自然エネルギー100%・エネルギー自給率600%を達成した歴史を振り返る。

そして、今、デンマークが目指す未来への展望をひも解く。

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デンマークは、人口約563万人、面積4.3万㎢の小さな国。
兵庫県と同じ人口の人々が、九州と同じ広さの地に暮らしているのと想像してみてほしい。

こんなに小さな国だが、様々な分野で世界の最先端を突っ走る。
とりわけ、エネルギー分野は世界の追随を許さない。

デンマークのエネルギー自給率は、2013年に初めて下回ったものの、90年代後半からほとんど常に100%を超えている。
現在わずか自給率4.4%(2013年時、原子力を除く)の日本と比べると、その先進性が一目瞭然だ。

ただし、下の図のように、主に北海油田から得られる石油に依存している上、採掘量は年々減少傾向にある。
それを補うため、デンマークは2010年に「2050年までに化石燃料依存からの完全脱却」を長期目標に掲げた。

自給率

デンマークのエネルギー政策の大転換の契機となったのは、1973年のオイルショックだった。

その前年の自給率は1.8%と、エネルギーのほとんどを外国からの資源に依存したデンマークは大打撃をくらう。
休日の車の利用規制が1年半続き、冷水でシャワーを浴びなければならない時期もあったという。

そんな中、当時2大電力会社が市場を独占していたことも相まって、1960年代から持ち上がっていた原発建設運動に拍車がかかり、国内15ヶ所が原発予定地に指定された(そのうち2ヶ所がロラン島に)。

しかし、過剰な原発建設の急進力に不安を抱いた国民が立ち上がり、1974年に「原子力情報組織(OOA)」というNGO を発足。
国民が中立的な視点から政策を判断する上で不可欠なエネルギーに関する情報や知識の提供などを行い、草の根運動を始めたのだ。
その結果、政府に最低3年間のモラトリアムを要求し、見事に成功させた。

時を同じくして政府は原発建設へ向けて世論を煽るため、「エネルギー情報委員会(EOU)」を設立するも、政府の思惑に反する形で、委員長は公正に国民に情報が届くように尽力した。
たとえば、同組織が発刊したエネルギーに関する6つの冊子には、賛成派と反対派の同じ意見はページをフル活用し、異なる意見はページを二分して併記し、中立性を保ちながら発信し続けた。

こうして国民一人ひとりが自分で考え、判断できるようになった結果、世論は反原発に傾き、各地でデモや反対運動が頻発。
迎えた1985年、政府は原発に依存しないエネルギー計画を採択するに至った。

当時流行した「原発? いりません」というシンボル

その後のデンマークのエネルギー政策は目覚ましい。

脱大量生産・大量消費を政策として掲げ、持続可能な再生可能エネルギーの利用に注目した1990年の「エネルギー2000」を皮切りに、数年おきに政府が中長期的な政策目標を打ち出し、1990年代後半に初めて完全自給を達成。

特に、重要視されている数値目標が、「2050年までに化石燃料の依存から脱却し、すべてを再生可能エネルギーに転換する」という長期目標。
そして、それを具現化するための、「2020年までにエネルギー消費の35%を再生可能エネルギーから供給し、かつ、消費電力の50%を風力でまかなう」ことを目指す中期目標だ。

政府が具体的な数値や期限を目標として掲げ、たとえ政権交代をしても、政策も大枠の目標も、大きくブレることはない。
デンマークは政府と国民が同じビジョンを共有していることが感じられる。

風車

コペンハーゲン近郊の洋上風車

ここまで、デンマークのエネルギーの歴史を手短に振り返り、彼らが見据える未来を紹介した。

正確な情報から一人ひとりが自分の頭で考えて行動する、国民。
必要に応じて公正な情報を開示し、目標を立てて目の前の課題に一つひとつ取り組む、政府。

ぼくにはデンマークがどこか羨ましく見えてしまう。

デンマークに住んだ自分の肌感覚でも、政治に関心の多い若者は非常に多く見受けられる。
とりわけ男性は政治に関心を持つ者が多く、たわいもなくサッカーの話をするように政治に関する意見交換を行い、それが「カッコいい」「イケてる」という風潮がある。

もちろんデンマークはとても小さな国であり、すでに原発が存在するこの巨大国家・日本では同じように物事は進まないだろう。
それでもこの国は、エネルギー問題の解決が不可能ではないことを体現し、日本や世界にその具体的な道筋を照らしている。