世界中でソーシャルデザインを仕掛けるThe Inoue Brothersのエゴがあっても誰もが幸せなビジネスとは?


どんなときもソーシャルデザインにこだわり続ける、デンマーク生まれの日本人クリエイター兄弟「The Inoue Brothers(ザ・イノウエ・ブラザーズ)」。これまで私たちEPOCH MAKERSが出会ってきたなかでも、情熱も創作もこだわりも最も突き抜けていることは間違いない。そして、「どこかで、誰かが不幸になるビジネスなんていらない」と語るその眼差しには一点の曇りもない。

そんな彼らが今年1月26日に発売した『僕たちはファッションの力で世界を変える ザ・イノウエ・ブラザーズという生き方』(PHP研究所)の出版記念トークライブがTSUTAYA TOKYO ROPPONGIで行われた。登壇者は、The Inoue Brothersのデザイナー井上聡さん、本書の取材・執筆を行った石井俊昭さん、EPOCH MAKERSのプロデューサー別府大河。

EPOCH MAKERSは予定調和の未来を信じない。The Inoue Brothersも同じ。ならばと、事前の打ち合わせもしないままイベントは開始。告知期間がわずか数日だったにもかかわらず満席となった会場は、客席から質問が飛び交い、終始熱気に包まれた。

The Inoue Brothersを突き動かすものとは? 「エシカル」という言葉の本質は? 日本の若い人がやっておくべきことは? 自分のエゴや欲とは? どう付き合えばいいのか?

今回は、EPOCH MAKERS初の本トークライブの一部を編集して、特別対談記事を公開する。The Inoue Brothersがあなたの背中をそっと押してくれるはずだから。これから世界で活躍するすべての人に向けて。

▽井上聡さんオリジナルインタビュー
世界を飛び回るコペンハーゲン育ちの日本人クリエイターが明かす、デンマークデザインの神髄
▽【番外編】井上兄弟がみるクリスチャニア
「デンマークの魂はクリスチャニアだ」日本人が知らない本当のコペンハーゲン

井上聡|Satoru INOUE
The Inoue Brothers」デザイナー
僕たちはファッションの力で世界を変える』著者

「The Inoue Brothers」は、デンマークで生まれ育った日系二世兄弟、井上聡(1978年生まれ)と清史(1980年生まれ)によるファッションブランド。2004年のブランド設立以来、生産の過程で地球環境に大きな負荷をかけない、生産者に不当な労働を強いない”エシカル(倫理的な)ファッション”を信条とし、春夏は東日本大震災で被災した縫製工場で生産するTシャツ、秋冬は南米アンデス地方の貧しい先住民たちと一緒につくったニットウェアを中心に展開する。さまざまなプロジェクトを通して、世の中に責任ある生産方法に対する関心を生み出すことを目標にしている。聡はコペンハーゲンを拠点にグラフィックデザイナーとして、清史はロンドンでヘアデザイナーとしても活動。そこで得た収入のほとんどをThe Inoue Brothersの運営に費やす。
「The Inoue Brothers」www.theinouebrothers.net

石井俊昭|Toshiaki ISHII
僕たちはファッションの力で世界を変える』取材・執筆

1969年生まれ。青山学院大学卒業後、アシェット婦人画報社(現ハースト婦人画報社)などを経て、2010年にコンデナスト・ジャパン入社。『GQ JAPAN』編集部にてファッション・ディレクター、副編集長を務める。14年に退社し、フリーランスとして独立。雑誌、WEB、カタログ制作などの編集・執筆などを行う。16年よりリヴァー所属。さまざまなメディアのクリエイティヴ・ディレクションや広告のコピーライティング、企業のブランディングなど、多岐にわたって活動中。

別府大河|Taiga BEPPU
「EPOCH MAKERS」プロデューサー/編集長

イギリス育ち。大学在学中、デンマークの「コペンハーゲンビジネススクール」へ交換留学。そこで、デンマークのインタビューメディア「EPOCH MAKERS」を立ち上げ、世界の最前で活躍する人を、英語と日本語でジャンルレスに取材して独自の視点で未来を探求。現在、自身はプロデューサー/編集長としてチームで運営する。また、執筆家「四角大輔」やライフスタイルブランド「yoggy inc.」などブランディングを軸にプロデュース活動を行う傍ら、コピーライターやWebディレクターなどクリエイティブ領域で活動する。

▶︎文:岡安夏来
▶︎編集:別府大河
▶︎現場写真提供:Yohey Wakamoto
▶︎その他写真提供:The Inoue Brothers
▶︎映像制作:Takanobu Watanabe

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〝乙女の生まれ変わりをビジネスで守る

Photo by Robert Lawrence in Andes

大河 僕たちは、デンマークにかかわる領域の最前線で活躍していて、自分たちが心から惹かれる人のみをインタビューさせていただいて発信する「EPOCH MAKERS」というメディアを運営しています。今回のトークライブは、去年の夏にコペンハーゲンでインタビューさせていただき、強烈な衝撃を受けた「The Inoue Brothers」の井上聡さんと登壇させてもらうことになりました。そして、今年1月26日に発売した『僕たちはファッションの力で世界を変える ザ・イノウエ・ブラザーズという生き方』の取材・執筆を担当した石井俊昭さんとともにお送りします。

石井 みなさん、今日はよろしくお願いします。2012年に『GQ JAPAN』の編集者として井上兄弟と知り合い、取材を何度も重ねた結果、この本を出すことになりました。2年半ほど前から書き始めて、途中で書くのをやめていた時期もあったんですが、実際に彼らがプロジェクトを行なっているアンデスや東北まで同行しながら、やっと完成させることができました。

大河 そして、The Inoue Brothersの兄の井上聡さんです。

 今回はこんなにたくさんの方に集まっていただき、本当にありがとうございます。はじめにThe Inoue Brothersについて簡単にお話させてください。

僕たちは、今でこそアンデスでアルパカセーターをつくってますが、もともとファッションビジネスをやろうとは思っていなかったんです。2000年の初めにデンマークをはじめとする北欧で起こった、ビジネスやデザインの力で社会問題を解決する「ソーシャルデザイン」のムーブメントがきっかけでこの道に入りました。

ソーシャルビジネスの魅力は、デザインだけではなく、誰にでもできること。デンマークには、ソーシャルパン屋さんや、ソーシャル音楽、ソーシャルアートもあります。彼らと同じように、The Inoue Brothersも普通のビジネスのように見えますが、〝モノづくりを通して、どれだけ周りにポジティブなインパクトを与えられるか〟をクリエイティブに考えながら活動してます。

僕たちの活動の一部をこのムービーで紹介させてください。

このムービーにあった「チャク」は、インカ帝国の時代から今に続く、アルパカよりもさらにラグジュアリーな毛を採取するための追い込み猟であり、儀式のひとつです。ペルーには「ビキューナ」という希少な野生動物がいて、アンデスの先住民には〝純金のコートを着た乙女の生まれ変わり〟だと信じられています。ビキューナは繊細でストレスを与えるとすぐに白髪になってしまう動物なので、その負担を少しでも軽くするために村人全員で1日かけてビキューナを取り囲むようにして歩きながら、毛の採取場に追い込んでいくんです。

このときは、最初に採取場に追い込んだのが約200頭。そのうち、メスのビキューナは逃がします。それはお腹に子どもがいた場合、流産の危険性があるからです。この段階で数は約半分ぐらいに減ってしまいます。オスでも毛刈りができるのは、毛が一定の長さに達しているものだけです。前回の毛刈りから2年半経っていないと、十分に毛が伸び切っていないので、それらも放たないといけません。そうして最後に残ったビキューナの毛を、素早く梳いてすぐに解放するのですが、ぼくたちが参加したチャクでは最終的に毛刈りができたのは4頭だけでした。そこからつくれるセーターはたったの8枚です。

ビキューナはその昔、密猟者たちが乱獲した結果、1960年代には生息数が約5000頭にまで減少しました。その毛が希少だったため、お金になったからです。そのため、1976年にワシントン条約(CITES)で絶滅危惧種に指定されて、ビキューナ繊維が取引が全面的に禁止になりました。

そういう経緯があったからこそ、サステイナブルなビジネスに変えないといけなかったんです。先住民たちもお金を稼がないといけないし、その商品をほしいと思うお金持ちの人もたくさんいる。さらに、ビキューナにも幸せに暮らしていてほしい。そのすべてを叶えて、ビジネスとして持続させるためには、このやり方しかなかったんです。だから、商売にすること自体が悪いのではなく、〝かかわるすべての人が得すること〟がいちばん重要なんです。

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ヴァンナチュールとアルパカセーター

Photo by Robert Lawrence in Andes

大河 まさにこの映像がすべてを語っていますが、僕がThe Inoue Brothersからいつも勇気をもらうのが、「クオリティの高いものをつくることに集中していいんだ」ということなんです。最近では〝エシカル〟や〝オーガニック〟という言葉がひとり歩きしてる印象もありますが、The Inoue Brothersはそこを目指しているというより、自然にそういったこととつながっているような印象を受けます。

 僕も大河くんも大好きで、いつも一緒に飲むのが「ヴァンナチュール(ナチュラルワイン)」だよね。オーガニックなぶどうから、自然な発酵過程を経て、ケミカルなものを極力排除してつくられるワインのことなんだけど、僕はヴァンナチュールと僕たちのアルパカニットのつくり方は通ずるところがあると思っているんです。

大河 まさかヴァンナチュールとは! 興味深いですね(笑)。ヴァンナチュールは手間のかかる方法でつくられていて、オーガニック認証も無理に取得せず、ぶどう本来の味やその土地の個性を表現するためのこだわりがすごいんですよね。

 僕はもともとワインを飲むと頭が痛くなって好きじゃなかったんです。でも、ヴァンナチュールを飲んでみたら全然大丈夫で……。なにより、ワインの知識とか値段、オーガニックだとか関係なく、とにかく美味しいんですよ! しかも、みんながハッピーになれるし。

Photo by Robert Lawrence in Andes

The Inoue Brothersの商品は、手に取ってもらえればそのクオリティがすぐにわかります。だから僕たちは、「このセーターは現地の人と直接取引していて…」という説明はあえてしません。エシカルということは買ってもらったあとに知ってもらえればいい。ヴァンナチュールのように、最高なものつくれば、自然と人気になって世界のスタンダードになっていくと信じているので。

それとヴァンナチュールの味がその年の天候に大きく影響されるように、アルパカセーターの毛質も自然の影響をモロに受けるので、僕たちのビジネスも大きく左右されます。だから当然のように「自然を守ろう」という気持ちになるんです。〝いい人間〟だからではなく、〝自分の仕事〟のために。

アンデスで仕事をしているとよくわかるんですが、地球温暖化はとても深刻な問題です。今はエシカルブームのようなことが起きていますが、この地球を守るためにはオーガニックやエシカルをスタンダードにしていかなければなりません。そのために、僕はデザイナーとしてクオリティが高くて、カッコいいものをつくり続ける責任があると感じています。そうやって〝自分のエゴ〟と〝正しいこと〟のバランスがとれていると、いろんな意味で動きやすくなるんです。

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エシカルは最もナチュラルな人間の在り方

Photo by Robert Lawrence in Andes

大河 The Inoue Brothersらしいですし、EPOCH MAKERSもそうありたいですね。さっきから〝エシカル〟という言葉がよく出てきていますが、それにはいろんな意味がありますよね。The Inoue Brothersにとってはどういう意味があるんですか?

 僕たちにとってのエシカルは〝人と人とのつながり〟が根本にあります。自分の人間性で行動を起こし、周りの人間性を引き寄せることがエシカルの本質だと考えています。だから、もし僕が利益追求のために労働者を買い叩いたら、相手とのつながりを失ってしまうので、それはエシカルとは言えないと思います。

そう考えると、つくり手だけじゃなくて、消費者だってエシカルになれる。ヨーロッパではよく「選挙の投票より消費者のお金の使い方の方が社会に影響力をもっている」と言われています。たとえば、南アフリカでのアパルトヘイトが終わったのも、「南アフリカ政府を支持する企業の商品は買いません」というムーブメントが世界中で起きたから。政府ではなく、消費者が世界を変えたんです。

でも買い物を我慢する必要はありません。不要なものを買わないようにちょっとだけ意識すればいいんです。大量生産のものはできるだけ手に取らない代わりに、長く使えるものを買う。そうすることで、すぐにエシカルな生き方を実践することができます。

Photo by Robert Lawrence

少し考えてみると、人間が存在する限り(僕の意味する)〝エシカル〟ってずっと続いていたはずなんですよね。それが人間にとっていちばん自然な在り方だから。

エシカルな仕事は本当に楽しいんです。いい仕事をやっているといい気分になるし、それをみんなと共有できるとさらに楽しい。そう思えると、一時的に売り上げが下がっても落ち込まないし、上向きになってもアンデスの生産者のことを思えば決して調子に乗れない。僕たちは彼らと仕事ができること自体がうれしくてたまらないですから。

こういう思考回路って、僕たちの母国デンマーク出身のアルネ・ヤコブセンやフィン・ユールといったデザイン界のレジェンド(巨匠)たちからも影響を受けています。なぜ、彼らが有名になったかというと、家具がカッコよかっただけじゃなくて、彼ら自身が人間としてカッコよかったからなんです。

アルネ・ヤコブセンは「クリエイティブな仕事に対して、不安がなくなったら自分は引退する」、フィン・ユールは「自分の作品を周りの人たちが喜ばなくなったら幼稚園の先生になる」と言っていたそうです。人間味があって惹きつけられますよね。僕たちも彼らのようなマインドで自分の人間性を表現して、人とつながり、全員が幸せになるエシカルビジネスをやり続けたいと思っています。

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エシカルは誰にでもできること

客席 デンマーク出身のデザイン界の巨匠やThe Inoue Brothersのように、人間としての魅力を磨くために〝若いうちからこれをやっておくべき〟アドバイスはありますか?

 3つあります。〝失敗を恐れないこと〟〝仲間をつくること〟〝海外に出ること〟です。

僕がグラフィックデザイナーひと筋でやっていた20代のころはとにかく失敗をしたくなかった。成功にこだわって、時間を無駄にするのを怖がっていたんです。でも、これまでのThe Inoue Brothersの活動を振り返ってみると、まさに失敗の連続でした。いま思えば、それこそが自分たちにとってのいちばんの糧になっていて、逆に自信やモチベーションにつながっています。

仲間をつくることも重要です。多くの人と違う道へ進むのは、決して簡単なことではありません。周りからはやめておけと言われるし、僕たちも途中で何度もやめようと思いました。でもそのとき、弟がいつも隣にいてくれたんです。僕にとっての仲間は弟だけど、仲間は誰だっていい。これから立ち向かう未来に対して不安があるとき、怖いときに誰かがそばにいてくれるのは、すごく力になるんです。

最後に、僕は特に若い人にどんどん海外に出ていってほしいと思ってます。日本人として自信をもってほしい。日本人のようにクリエイティブでやさしい人たちが外に出ていけば、世界にもっと大きな変化が生まれると思うんですよね。

Photo by Robert Lawrence in Andes

実は、この本『僕たちはファッションの力で世界を変える』を出版したのは、そういう僕たちの考えをみんなに伝えたかったからなんです。日本人の若いコたちと話していると、「エシカルな社会にしたい」「正しいことをしたい」という想いはあるけど、安全な生き方を選んでいるように感じることが多かったんです。

3年前に執筆依頼の話をいただいたときは「僕たちが本を出すなんて30年早い」と思いました(笑)。まだ何の結果も残せていなかったから。でも、やった成果より、「僕たちと一緒に世界を変えようよ」という内容ならやりたいと思えるようになって。じゃあ、せっかく出すんだったら、すべてを丸出しにしようと。失敗のエピソードも全部曝け出して、母のコメントまで入れたんですよ。

石井 僕が井上兄弟と初めて会ったとき、彼らは自分たちの商品も持っていなくて、生き方のビジョンや政治の話しかしなかったのが、ファッションデザイナーらしくなくて新鮮でした。しかも、別れ際には「ファッションで世界を変える」と言っていたのが、何となく気になって取材をし始めたんです。

僕もこの会場に来ているみんなと同じように「そんなに世の中甘くないよね?」「本当にそんなことができるの?」と疑いながら話を聞いていました。でも、気づいたら自分がいちばんのファンになっていたんです。そして、彼らの考えを少しでも世の中に広めたいという想いで、この本を完成させました。

 僕たちに愛情を注いでこの本を書いてくれた石井さんには、本当に心から感謝してます。自分たちは特別な存在だなんてまったく思っていません。僕たちはみんなとエシカルを共有したいと思っていて、こうして本を出せたおかげで、今ここでこんな話をしています。今日の出会いをきっかけに、皆さんも「失敗してもいいから自分もエシカルに生きてみよう」と少しでも居心地のいい枠組みから飛び出してみてくれたらうれしいです。

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エゴや欲はあってもいい。
それを広げることが人間のチャレンジだ

Photo by Robert Lawrence in Andes

大河 聡さんのお話を聞いていて最後まで一貫してるのが「自分のエゴを肯定するのが大事」なのかなって。「自分にとって大切なもの」「絶対に譲れないもの」という人間の欲求の根底にあるエゴを肯定して、それに素直になること。すると、失敗を恐れなくなるし、海外に出たいという好奇心に従えるし、心から全員を幸せにしたいと思えるし、エゴと正しいことが一致する。でも、そのエゴが低次元だと周りに流されたり、誰かを傷つけてしまう。だからこそ、エゴを見極めることが重要なんだと思いました。

 僕は自分のなかにあるエゴを消すことはできないと思っています。僕にはエゴがたくさんある。重要なのは、そのエゴとどう付き合っていくかだと思います。

素直にそう思えるようになったのは、6年前にあるプロジェクトで南アフリカに行くことになったときのこと。そこで出会った「サン人」という民族のおじいちゃんがこんなことを言ってたんです。

「僕たちは自分の周りに円を書くんだ。その円が自分。生きていくと、その円の中に奥さんと子どもたちが入ったりする。円をどんどん広げていくと、自分の世界の見方が変わっていって、次はお隣さんとか親戚とか。それも全部自分のエゴの中なんだ。

自分がいちばんちっぽけなときは円の中には自分しかいない。〝オレはオレのために生きる〟と思ってる段階。でも、その円を広げていくことこそが人間としてのチャレンジなんだ。だから、いちばんすごい人が誰かわかるか? 全世界がその円の中に入ってる人だよ」

Photo by Robert Lawrence in Andes

つまり、すべてはエゴなんですよね。人間がそもそももっているもので、否定すべきものでも捨てるものでもない。大切なのは、その円をどれだけ広げられるかということ。欲もそうで、自分だけが幸せになればいいのか、ほかの人も幸せにしたいのか、それを考えることが大切なんです。

「円は広がっていくと、毎日がもっと気持ちよくなるよ」

おじいちゃんは最後にそうアドバイスしてくれました。それから僕はエゴをもつことはいいことだと思えるようになったんです。エゴをうまく使って生きればいいんだって。

大河 エゴの広さなら、The Inoue Brothersはもうデンマークから日本、アンデスや南アフリカまで大きくなってますもんね。

 僕たちにとってファッションや本よりも大事なことは、もっとみんなが仲よくなることです。もっと人間らしく生きること。いい世界をつくること。今の状況を変えることなんですよね。

現状に不満がなければ、僕たちはThe Inoue Brothersとして活動していなかったと思います。でも問題があるからその解決方法として、本を出版したり、服をつくったりしているんですよね。なので極論、The Inoue Brothersの本や商品は関係ないです。買わなくてもいいです。でも今日出会えたことが、少しでもポジティブな世界の実現につながればいいなと願っています。

▽井上聡さんオリジナルインタビュー
世界を飛び回るコペンハーゲン育ちの日本人クリエイターが明かす、デンマークデザインの神髄
▽【番外編】井上兄弟がみるクリスチャニア
「デンマークの魂はクリスチャニアだ」日本人が知らない本当のコペンハーゲン