「足りない」はもう捨てよう--デンマーク初のプロブロガーが変える少子化問題の未来


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少子化は日本が抱える最も深刻な問題のひとつである。そしてまた、福祉国家デンマークもまた少なからず同じ問題を抱えていた。日本やデンマークに限らず、世界中の先進国で出生率が上がらない原因とは? それをどのように解決できるのか? 多くのデンマーク人ママ界で超有名なデンマーク初のプロブロガーにそのヒントを伺った。

 

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Anette Madsen|アネッテ・マドソン

BlogBusiness.dk 代表

デンマーク初のプロブロガー。1974年生まれ。3児の母。

ITコンサルタント会社に勤務中の2006年、0〜2歳の子持ちお母さんための育児メディアBabyBusiness.dkを立ち上げた。2008年から独立し、デンマーク初のプロブロガーとして起業。BlogBusiness.dk社を設立。

その後、3〜10歳の子持ちお母さんのためのJuniorBusiness.dk、11〜結婚するまでの子持ちお母さんのためのBryllupsBusiness.dkを立ち上げた。

▶︎ インタビュー&文&写真:別府大河

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デンマークの少子化問題
社会福祉の意外な落とし穴とは?

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――ブログ収入で生計を立てている、アネッテさん。そのサイトは、デンマークのお母さんたちのためのウェブサイトなんですよね。日本は少子高齢化が深刻で、ものすごく大問題なんですが、デンマークの出生率はどうなんですか?

2014年のデンマークの合計特殊出生率(一人の女性が生涯に何人の子供を産むかを表す平均値)は、1.73(日本は1.41)でした。最近は改善し始めていると言われていますが、人口を維持するには、2.07は必要だと言われているので、デンマークでも問題となっています。

悪化し始めたのは、ちょうど2008年のリーマンショックからで。みんな子供を産むのにはお金がかかると思っているから、出産へなかなか踏み込めないんですよ。出産費は無料で、育児サービスがこんなに充実しているのに…(デンマークの福祉についての記事はこちら)。

――それはびっくりしました! 日本と比べたら文字通り桁違いに安いですからね。リーマンショック以外に理由はあるんですか?

女性の晩婚化、晩産化も影響していると言われています。デンマーク人の女性は、35歳になっても出産を考えていない人が少なくありません。

デンマークは福祉が充実しているがゆえに若者が社会に出る年齢が他の国と比べて圧倒的に遅い。たとえば、普通のデンマークの学生が大学院を出て就職するのはだいたい20代後半。女性にとってはちょうど適齢期の頃に、結婚や出産のことを考えるより、自分の教育や卒業後のキャリアを優先しがちなんですよね。実際に、「子供を作ろうとしたんだけどもう手遅れだった」みたいなことってデンマークではけっこう多い話で。

――日本よりはるかに女性が職場復帰しやすい環境だとも思うんですけどね…。

あとは、消費者として企業に踊らされているっていうことじゃないですかね。「子供を産むまでには車がなければならない」「子供を育てるには一戸建ての大きな家が必要だ」と少なからず思い込まされている思います。一度そう刷り込まされちゃうと、なかなか出産に踏み切れないばかりか、パートナーへの期待値が高くなっちゃて、未婚化・晩婚化もまた進んじゃう。デンマークに限った話でも、子供に限った話でもないですけど、この問題は根深いですよね。

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「そんなにいらないじゃん」

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――これだけ福祉の手厚いデンマークでさえ、日本と同じ問題を抱えているんですね…。そもそもアネッテさんはどのような経緯でブログを始めたんですか?

実は、今話したことが、私がブログを始めたことにつながっているんです。

妊婦さんって、「子供が生まれる前にどんな準備が必要なのか?」「最初の1ヶ月はどんなことをしてあげればいいの?」といったことにすごく関心がありますよね。デンマークでは出産予定日の4週間前から産休に入って時間がたっぷりあるので、妊婦さんはネットで検索したり、雑誌を読みあさったりして、とにかく必死に情報収集するんです。

私も3人の子供がいるので、その気持ちが本当によくわかって。お母さんって子供に尽くしてあげたいから、服だとか食べ物、おもちゃとかに、何でもかんでも買ってあげたくなっちゃうんですよ。特に一人目の子を産む時って、初めてのことだらけでものすごく不安。でも、一人目を生んでわかったのは「そんなにいらないじゃん」ってことだった。

――それがさっき言っていたことにつながるわけですね。

そうなんです。企業は子育てへの不安につけ込んで、「これを買わないと安心して育てられません」「健康的な子供に育てるには、これをこれだけ食べさせないといけません」と、お母さんたちに一種の強迫観念を植え付けて、商品をどんどん売り込んでいく。もちろん本当に必要なものもあったけど、そのほとんどはただの商売目的。これを買っても足りない、あれを食べさせても足りないーーその繰り返し。

そんなこと言っていたら、”世界一幸せな家庭”を築くには、お金がいくらあっても足りませんよ(笑)。本来子育ては楽しいものなのに、そんな広告ばかりに耳を傾けていたら心配が尽きませんよね。私は、いつからかそんな世の中が怖くなっちゃって。

それなら、私自身のリアルな体験をブログに書いて発信したら、少しは意味があるんじゃないかと思ったんです。「これは買ってよかった」「でもあれは必要なかったな」という経験談を見聞きする機会さえあれば、お母さんたちの心配も和らぐだろうし、ちゃんとした買い物ができるようになるはず。出産・育児業界ももっと健全になるんじゃないかって思ったんです。

――アネッテさんがブログを始めたのは2006年。その時点で、ネット上でブログを書くって、ものすごく先見性がありますよね。

もともとIT関連会社に勤めていたのも大きいかもしれませんが、その当初は、「お金を稼ごう!」なんていう気はまったくなくて。ただの趣味だったんです。

だけどいつからか、ものすごい数のお母さんたちに支持されるようなって。ブログを始めて2年、2008年に「そろそろ広告収入だけで家族を養っていけるな!」って思って、仕事を辞め、起業してブログに専念することにしました。

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人は「リアル」にしか興味がない

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――今でこそ日本にもプロブロガーは出てきていますけど、日本は人口1億2千万人の国ですからね。デンマークの人口は550万人。分母がこれだけ違いますから、やっぱりものすごいと思います。

後からわかったことなんですが、私って「デンマーク初のプロブロガー」だったんですよ(笑)。

――そうだったんですね(笑)。

もちろん私のサイトは全部デンマーク語で、ターゲットはデンマークのお母さんたち。とても小さい市場ですが、子供が生まれ続ける限りちゃんとニーズはありますからね。記事はもともと自分の体験談を書いていたんですけど、自分の子供が育つにつれてわからなくなっちゃったので、今は商品を紹介したり、専門家の意見だったり、子育てに関連する記事が多いんです。

その代わり、新たに2つのサイトを作って、「無料でも私のサイトで記事を書きたい!」という人にも書いてもらっています。いつも一定数の読者がいて、検索からの流入も多いので、ライターにとってもいいプラットフォームになっているんですよ。彼女たちはちょうど今子育て真っ最中なので、リアルな情報を提供してくれて。

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――マスメディアは影響力が強いですけど、インターネットが出現してから、嘘で作られた広告ってあまり意味ないのかもしれませんね。

そうかもしれません。もちろん「妊娠して真っ先にやるべき10のこと」「産後に大切な子供のケアとは?」といった、いつでも需要のあるコンテンツも好まれますが、よくシェアされて読まれたり、アフィリエイト(読者がブログから飛んで実際に購入する)になりやすいのは、実体験に基づいたリアルな記事が多いですね。

私は有名人でもなければ、専門家でもありません。普通のお母さんだからこそ、私に親近感を感じてくれるんだと思います。実際に読者の人とオンライン上でやりとりしたり、友達になったりもしますしね。やっぱりそういう人からのオススメには説得力がある。私のサイトは企業にとってもいい宣伝になっていると思います。

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お母さんだからこそできること
そこに少子化解決の糸口が!

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――日本はシステムにも問題があるんですが、程度は違えど、デンマークも共通の問題を抱えていることがわかりました。アネッテさんは何かやっていることはありますか?

私はあくまでも育児に特化しているので、出産を促せているかはわかりません。でも、出産・子育てに思っているほどお金はそんなに必要はない、ということをどうしても伝えたいんです。自分と同じような経験をして欲しくなくって。やみくもに何も恐れたり、心配する意味なんてないんですよ。

あとは、「出産は簡単ではありません」という内容の記事は適度に書くようにしています。現に、「デンマーク人カップルの10人に6人は出産に関する何かしらの問題を抱えている」というデータがあって。まだ原因は完全には解明されていないんですけど、出産の機会を逃しているケースが多いみたいで。だから、「出産するのはできるだけ早い方がいい」ということをできるだけ発信していますね。

――アネッテさんのお話を聞いて、お母さんであることを活かして何かやってみるのって大切だと思いました。自分と同じ苦労をしている人って絶対共感しあえるはずだと思います。

ブログをしたり、Facebookに投稿するお母さんは実際に増えてきてますよね。ちょっと空いた時間にネットで発信したり、それも日記だけじゃなくて、何かしらためになるようなことを書けばちょっとしたお小遣いになるかもしれないし、ネット上でママ友も見つかるかもしれませんよね。

1人の問題は、同じ問題を抱えた人が後ろにあと99人いる。私はそう思っています。ですので、問題だと思うことを書いてみたり、解決方法をシェアすることで、もっと出産や育児が楽しくなって、少しずつ少子化問題も解決してたらいいですよね。